メイクの起源  ―美の追求

なぜ人はメイクをするのか。
なぜ美しくあろうとするのか。

ここから少し話が大きくなってしまうことをお許し願いたい。人類学にこういう仮説が存在する。

二足歩行、言語や火の使用など人が進化の過程で獲得した能力はたくさんあるが、逆に退化させたものもある。それが「発情期」だとする仮説である。

動物は人と違って強烈な発情期が周期的にやってくるが、人間にそれはない。(逆に人間は年中発情期とも言えなくもないが)。猿が人の祖先とするなら進化の過程で発情期は退化してしまったのではないか。

発情期になるとメスの身体には発情兆候が現れる。猿ならお尻が赤くなる、猫なら鳴き声が特徴的になるなど、外見で一目瞭然のサインが現れ、発情したオスはそれを見てメスに群がる。

群がったオス同士で熾烈な競争が行われるため、
長い歳月を経て強いオスの遺伝子だけが生き残った。

ライオンのたてがみ
孔雀の羽
象の牙
カブトムシの角

これらを持つのはオスだけ。
メスはその姿をオスほどに進化させない。
発情期になれば自然とオスが寄ってくるので着飾る必要がないからだ。


メスライオン
オスのようにたてがみが発達していない。
派手ではないので一見弱そうだが
子供の食糧確保はメスの仕事なのでオスと同じくらい狩りは上手い。
父親は何をやってるんだ?
オスは別のオスに自分のメスを取られないよう監視するのが仕事だそうだ。

The African Forest Elephant, Loxodonta africana cyclotis, (forest dwelling elephant) of Congo Basin. At the Dzanga saline (a forest clearing) Central African Republic, Sangha-Mbaere, Dzanga Sangha


メス象
たしかに気持ち程度の牙しか生えていない。
象はライオンのようにハーレムを形成しないので交尾をしたらオスはメスの前から消えてしまう。
そのため子育てはメス象の群れで行われる。


メス孔雀
色気の欠片も感じられない羽。
努力をせずともオスが群がる世界観は女性を堕落させる。
―――――――――――――――

あらゆる動物の中で、メスが着飾るのは人間だけだそうだ。
たしかにメイクをするのは人間の女性だけ。
人間界では男性よりも女性の方が圧倒的に外見に投資する。

なぜそうなるのか?

以上の人類学の話から推測するに、
強烈な発情期が退化した結果、黙っていてもオスが群がってくる世界観がなくなった。優秀なオスを捕まえるためメス側からも求愛行為をせざるを得なくなったから、ではないだろうか。

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性理論のための三論文(一九〇五年版)  ¥3,850 税込

人間の行動原理を「経済」と説いたのはマルクス。
人間は金のために生きる。ごもっとも。
一方でそれを「性欲」と説いたのがフロイト。
人の行動原理は全てエロ。いささか説得力は足りないが無視できない。
――――――――――――

もちろん外見を着飾る行為が全て異性獲得のためとは言い切れない。
洋服を着ることは旧約聖書によれば「恥」を知った人の原罪であるし、聖書によらずとも素っ裸では人間社会は維持できない。
人間は最低限の社会性を維持するために常識的な服装を心がけ、顔を洗い、髪型を整える。

そこまでなら理解もできるが「メイク」は明らかに過剰ではないだろうか。アイラインを引くことは社会性の範疇とは思えない。

ではなぜ必要もないのに安くないメイク道具を揃え、貴重な朝の時間を費やすのか。

やはりそこには発情期が退化したことによって女性側に強いられた求愛意識、いわゆる「モテたい」が行動に現れた結果のように思う。

であるはずなのに、なぜメイクをするのか?という問いに対して「モテるため」と答える女性はほとんどいない。
「最低限のマナー」
「習慣」
「自己満」

などなど様々な回答を頂く。
羞恥心から「モテたい」という本音を隠しているのか、それとも本当にそう思っているのか。

日本(及び韓国)ほど日常的にメイクをする国はないと言われている。
欧米圏ではメイクをするのは非日常的なイベントの時だけだそうだ。
クラブへ行く、パーティーへ行く、デートをする…
およそ男性をハントする時が多い。


「メイクをするのは最低限のマナー、一歩外へ出るならメイクをするのは当たり前。
どうせするなら綺麗な顔を作りましょう。そのために我社の製品を…」


化粧品業界のCMはこの感覚を刷り込み続けてきた。日本、韓国におけるメイクの習慣化は業界の長年のプロパガンダの賜物だと推測できる。

メイクがあまりにも日常となってしまったが故に
我々日本人はメイクの本当の目的を見失っているように思える。

美の追求。
それは異性の目を抜きにして語ることはできない。

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